株式会社ダイセルは、セルロース化学を起点に、自動車用エアバッグインフレーター(安全部品)、エンジニアリングプラスチック、医薬中間体など幅広い分野を手がける総合化学メーカーです。2025年10月には完全子会社であるポリプラスチックス株式会社(エンジニアリングプラスチック大手)の全事業を2026年4月1日付で吸収分割により承継する再編計画を発表しており、転職を考えるうえで「どの法人に応募することになるのか」を理解しておく必要が出てきています。本記事では最新の決算データとこの事業再編の内容を踏まえ、転職希望者が押さえるべき情報を解説します。


企業概要

  • 会社名:株式会社ダイセル(Daicel Corporation)

  • 設立:1919年

  • 本社所在地:大阪市北区(大阪本社)/東京都港区(東京本社)

  • 従業員数(連結):11,178人(2025年3月期)

  • 売上高:5,865億31百万円(2025年3月期、前期比5.1%増)

  • 親会社株主に帰属する当期純利益:494億80百万円(前期比11.4%減)

  • 平均年収:約859万円(平均年齢42.2歳)

  • 海外拠点:アジア、北米、欧州など20か国以上


【重要】ポリプラスチックスの吸収分割と、応募先法人はどう変わるか

ダイセルは2020年にエンジニアリングプラスチック大手のポリプラスチックス株式会社を完全子会社化し、以降「ダイセル式生産革新」の導入などグループシナジーの強化を進めてきました。そして2025年10月16日、ポリプラスチックスの会社分割を伴うグループ企業再編計画を発表し、2026年1月15日には具体的な吸収分割契約の締結・商号変更を決議しています。

再編の内容は、ポリプラスチックス株式会社を(1)エンジニアリングプラスチック事業(付帯関連事業を含む)と、(2)関係会社株式の保有・管理事業に分割したうえで、2026年4月1日付でダイセルが(1)の事業を吸収分割により包括的に承継するというものです。目的として、ポリプラスチックスが持つテクニカルサービス・ソリューション提供のノウハウをダイセル本体の安全部品事業・マテリアル事業と密接に連携させ、グループ全体での人材活用とコーポレート機能の効率化を図ることが挙げられています。

この再編により、これまで「ポリプラスチックス株式会社」として独立した採用を行っていたエンジニアリングプラスチック関連の職種は、2026年4月以降は「株式会社ダイセル」としての採用・所属に切り替わっていく見込みです。求人サイトの表記が過渡期で混在する可能性があるため、エンプラ分野への応募を検討する場合は、応募時点での正式な採用法人・契約形態を必ず確認することをおすすめします。


主な事業分野と製品

1. セルロース事業

  • 酢酸セルロース(たばこフィルター、液晶ディスプレイ向け)

  • セルロース誘導体(食品添加物、医薬用途)

2. 有機化学品事業

  • 有機酸、エステル

  • 医薬中間体

  • 香料・化粧品原料

3. 合成樹脂・エンジニアリングプラスチック事業

  • エンジニアリングプラスチック(ポリプラスチックス事業の統合で強化)

  • 光学フィルム、包装用フィルム

4. セイフティ(安全部品)事業

  • 自動車用エアバッグインフレーター(ガス発生装置):世界的に高いシェア

  • シートベルト用プリテンショナーガス発生装置


業績トレンド:増収も経常益・純利益は減益

2025年3月期の売上高は5,865億31百万円と前期比5.1%増加した一方、営業利益は610億11百万円(同2.2%減)、経常利益は623億20百万円(同8.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は494億80百万円(同11.4%減)と、増収減益の決算となりました。世界経済の緩やかな持ち直しが続く中でも、原材料・エネルギーコストの上昇や事業構成の変化が利益を圧迫した形です。中期戦略「Accelerate 2025」および長期ビジョン「DAICEL VISION 4.0」のもとで、既存事業の再編・合弁見直しとアセットのスリム化を進めている最中であり、ポリプラスチックス統合もこの一環と位置づけられます。


【安全に関する重要事項】2025年5月、姫路製造所網干工場での死亡事案

ダイセルの主力拠点である姫路製造所網干工場では、2025年5月23日夜、有機エリアの設備管理部門に所属する50代の男性従業員が工場排水監視計器を設置した小屋内で意識不明の状態で発見され、その後死亡が確認される事案が発生しました。会社発表によれば、定期修繕工事に伴い計装用の空気が窒素に切り替えられていたことから、小屋内が酸素欠乏状態になっていた可能性があるとされています。

化学プラントでは酸素欠乏や有毒ガスのリスク管理が生産現場の最重要課題の一つです。この事案は2025年に発生した比較的新しい出来事であり、姫路製造所などの生産・保安部門を志望する場合は、事故後にどのような安全対策の見直しが行われたかを面接で確認する価値があります。同社は事案の概要を公式サイトで公表しており、情報開示の姿勢を確認する材料にもなります。


働きやすさに関するデータ

  • 平均残業時間:月24.8時間程度(OpenWork集計ベース)

  • 有給休暇取得率:61.0%程度(同上)

離職率については、情報源によって評価が大きく分かれています。OpenWorkや口コミサイトには「人に優しい会社で離職率は低い(1%程度という声も)」という肯定的な意見がある一方、「同期入社の半数がすでに離職していた」「新卒採用者数が同業他社より多いのは離職率の高さの裏返しではないか」という厳しい指摘も見られます。会社全体の離職率と、部署・年次によって体感が大きく異なっている可能性があるため、単一の数値を鵜呑みにせず、面接や職場見学の際に配属予定部署の実態を確認することをおすすめします。残業についても「勤務時間管理表がなくサービス残業になりがち」という声と、「月5時間程度で高評価」という声の両方があり、部署差の大きさがうかがえます。


ダイセルの強み

  1. セルロース化学のパイオニア:世界有数の酢酸セルロース生産能力、フィルターや光学用途で高シェア

  2. 安全部品の世界的地位:エアバッグ用ガス発生装置でグローバル展開、自動車メーカーとの長期取引関係

  3. エンジニアリングプラスチック事業の強化:ポリプラスチックス統合によりテクニカルサービス・ソリューション提供力を本体に取り込み

  4. グローバル展開:海外売上比率50%以上、アジア・北米・欧州に生産・販売拠点

国内の主要拠点

  • 大阪本社:大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪タワーB
  • 東京本社:東京都港区港南2-18-1 JR品川イーストビル
  • 姫路製造所(兵庫県姫路市網干区):セルロース、有機化学品、高機能材料などを製造する最大拠点(2025年5月に死亡事案が発生)
  • 大竹工場(広島県大竹市):酢酸やセルロースアセテート、プラスチック製品などを生産
  • 新井工場(新潟県妙高市):セルロース製品や特殊化学品を製造
  • 富士工場(静岡県富士市):ポリプラスチックス統合後、エンジニアリングプラスチックの主要拠点として位置づけ

海外の主要拠点

  • Daicel Safety Systems Americas, Inc.(米国):自動車用エアバッグインフレーターを製造
  • Daicel (Europe) GmbH(ドイツ):欧州事業の統括拠点
  • ダイセル(中国)投資有限公司(中国):中国市場での事業展開を管理
  • Daicel (Thailand) Co., Ltd.(タイ):東南アジア地域の生産・販売拠点

転職希望者が押さえるべきポイント

求められる人材像

  • 化学、材料、機械、電気分野の知識

  • 英語力(海外拠点との連携が多い)

  • 開発・生産・品質保証・プラント保安の経験者

採用職種例

  • エンジニアリングプラスチックの研究開発・技術サービス(ポリプラスチックス統合領域)

  • エアバッグ部品の設計・生産技術

  • 医薬中間体のプロセス開発

  • プラント保安・安全管理

  • 海外営業・事業開発

面接では「ポリプラスチックス統合後、自分が配属される可能性のある事業・法人はどこか」を確認しておくと、入社後のギャップを防げます。また、離職率や残業時間について社内の評価が分かれている企業だけに、配属予定部署の一次情報(現場社員との面談など)を得る努力が特に重要です。


まとめ

ダイセルは、セルロース化学と自動車用安全部品で世界的な地位を持ちながら、2026年4月にはエンジニアリングプラスチック子会社ポリプラスチックスを本体に統合するという大きな転換点を迎えます。2025年3月期は増収ながら経常利益・純利益が減益となり、同年5月には主力の姫路製造所で死亡事案も発生しました。転職を検討する際は、こうした事業再編や労働環境に関する情報を多角的に確認し、非公開求人も活用しながら自身の専門性とのマッチングを見極めることをおすすめします。


参考:株式会社ダイセル 決算短信・IR情報ダイセル「ポリプラスチックス株式会社の会社分割を伴うグループ企業再編計画に関するお知らせ」ダイセル「ポリプラスチックス株式会社の会社簡易吸収分割および商号変更に関するお知らせ」ダイセル「当社姫路製造所網干工場における従業員の死亡について」OpenWork ダイセル 社員クチコミ