日本の農薬業界は、国内市場が縮小する一方で海外展開・M&A・バイオ農薬シフトが加速しています。2025年には住友化学が仏国の販売会社を買収し、日産化学はインドで新除草剤を上市するなど、各社の動きが活発化しました。本記事では最新の決算データと業界動向を踏まえ、農薬メーカーランキングを更新してお届けします。


農薬メーカーランキング(農薬事業売上高・国内外シェア総合)

順位 企業名 農薬関連事業売上高(概算) 主力製品・特徴
1位 住友化学 約5,400億円(アグロ&ライフソリューション事業、2025年3月期) 殺虫剤・除草剤・殺菌剤に加え、飼料添加物メチオニン等も含む。2025年に仏販売会社を買収し欧州展開を強化
2位 日産化学 国内農薬販売シェア17%で国内首位 殺虫剤(ネオニコチノイド系)、水稲用農薬。2025年5月にインドで新除草剤「Altair」を上市
3位 クミアイ化学工業 約1,705億円(2025年10月期、前年比5.8%増) 除草剤、殺菌剤、水稲・畑作向け。増収も純利益は前年比67.8%減と大幅減益
4位 日本農薬 約700億円(概算) 殺虫剤(フィプロニル系)、除草剤
5位 石原産業 2025年4-6月期は増収増益、純利益64.9%増 殺虫剤(フィプロニル系、スチノフォン)。2026年3月期通期純利益92億円を見込む
6位 北興化学工業 約300億円(概算) 殺虫剤、殺菌剤、水稲向け農薬
7位 三井化学アグロ 約280億円(概算) 除草剤、殺虫剤(三井化学子会社)
8位 日本エンバイロケミカルズ 約200億円(概算) 衛生用殺虫剤、防疫・害虫防除
9位 保土谷化学工業 約180億円(概算) 殺菌剤、農薬原体・中間体
10位 日本農薬ホールディングス(OATアグリオ) 約150億円(概算) 液体肥料、養液栽培向け製品

※「概算」表記の数値は、各社が農薬事業単体の売上高を開示していないため業界推計値です。住友化学・日産化学は事業セグメントの区分や開示方法が異なるため、単純な売上高の大小だけで比較できない点にご注意ください。


【重要】「売上規模トップ」と「国内シェアトップ」は別の企業

農薬業界のランキングを見る際に混同しやすいのが、「農薬事業の売上規模」と「国内市場でのシェア」です。海外売上を含めた事業規模では住友化学が圧倒的な最大手ですが、これは同社が北米・欧州・アジアに幅広い販売網を持つためです。一方、日本国内の農薬販売シェアだけで見ると、日産化学が17%で首位、2位はシンジェンタ(13%、外資系)、3位が住友化学(11%)という構成になっています。「日本最大の農薬メーカー」という表現は、どちらの基準で語っているかによって答えが変わる点に注意が必要です。


2025〜2026年の業界動向

世界市場は堅調に拡大

世界の農薬市場規模は2025年の約300億ドルから2026年には約318億ドルへ拡大し、2035年には502億ドルに達すると予測されています(年平均成長率5.9%)。

グローバル大手の再編が加速

シンジェンタは2025年に微生物農薬スタートアップIntrinsyx Bioを買収し、窒素利用効率分野を強化。バイエルもバイオ燃料原料事業を買収するなど、大手による周辺分野の取り込みが進んでいます。日本企業もこの流れに合わせ、住友化学が2025年に仏国の農薬販売会社を買収するなど、海外展開を積極化させています。

バイオ農薬市場が急拡大

化学合成農薬に代わる「生物農薬(バイオペスティサイド)」市場は、2025年の約99億ドルから2032年には292億ドルまで拡大すると予測され、年平均成長率は16.72%と化学農薬市場全体(5.9%)を大きく上回るペースです。住友化学が2024年に昆虫フェロモンを活用した害虫防除事業に参入したのも、この流れを踏まえた動きです。

国内市場は縮小、海外展開が生命線に

日本国内の農薬市場は農業従事者の減少や耕作面積の縮小により伸び悩んでおり、各社とも海外売上比率を高める戦略にシフトしています。クミアイ化学工業の海外売上高比率は約55%に達しており、北米・アジア・南米が主戦場となっています。


まとめ

農薬業界は、国内市場の縮小・海外展開・バイオ農薬シフトという3つの構造変化が同時進行しています。ランキングを見る際は「売上規模」と「国内シェア」を混同せず、各社がどの市場・分野に強みを持つのかを理解した上で比較することが重要です。就職・転職でこの業界を検討する場合も、海外事業や新分野(バイオ農薬・フェロモン剤等)への配属可能性を意識しておくとよいでしょう。


参考:住友化学 決算短信クミアイ化学工業 財務ハイライト日産化学 農業化学品事業説明会資料東洋経済オンライン「世界で進む農薬メガ再編」