東レの会社分析と転職情報【炭素繊維で世界シェア1位、2度の品質不正とその後の改革】
東レ株式会社は、炭素繊維で世界シェア約31%・首位を誇る日本を代表する総合素材メーカーです。2025年3月期は純利益が前期比約3.6倍の779億円となり過去最高益を更新しましたが、その一方で同社は2017年と2022年の2度にわたり、品質・認証に関わる不正が発覚した過去も持ちます。さらに、合繊原料テレフタル酸(TPA)の国内生産撤退など、収益改善に向けた事業構造の見直しも進行中です。本記事では、最新の決算データに加え、意外と知られていない品質不正の経緯とその後のガバナンス改革、進行中の構造改革を踏まえて、転職希望者が押さえるべき情報を解説します。
企業概要
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会社名:東レ株式会社(Toray Industries, Inc.)
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設立:1926年
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本社所在地:東京都中央区日本橋室町(東京本社)/大阪市北区中之島(大阪本社)
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従業員数(連結):48,140人(2024年3月末時点、有価証券報告書ベース)
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売上収益:2兆5,632億円(2025年3月期、前期比4%増)
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当期利益:779億円(2025年3月期、前期比約3.6倍)
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平均年収:約821万円(平均年齢40.8歳、平均勤続年数16.6年)
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海外拠点:米国、フランス、中国、マレーシア、インドネシアなど世界29か国以上
【重要】2017年・2022年の品質不正と、その後の品質保証体制
東レを検討するうえで、特に品質保証・生産技術・製造職を志望する方に知っておいてほしいのが、過去2度発覚した品質関連の不正です。
2017年発覚:子会社によるタイヤコード補強材のデータ改ざん
子会社の東レハイブリッドコード(THC)が、2008年4月から2016年7月までの約8年間、タイヤコードや自動車用ホース・ベルトの補強材に関する検査データを149件改ざんし、自動車関連メーカーなど約13社に供給していたことが2017年11月に公表されました。契約仕様(強力260ニュートン)に届かない実測値(258ニュートン程度)を、満たしているように書き換えていたものです。外部調査委員会の報告書は「経営者の品質保証への関心が薄かった」「品質保証部門が人手不足だった」と組織的な要因を指摘しています。
2022年発覚:樹脂製品の米国UL認証を巡る不正、約30年間継続
2021年11月の社内アンケートで申告を受けて発覚したのが、樹脂製品の米国UL認証(難燃性規格UL94)を巡る不正です。千葉工場(ABS樹脂「トヨラック」)や名古屋事業場(ナイロン・PBT・PPS・LCP・PLAなどのエンジニアリングプラスチック)で、ULの抜き打ち試験の際に登録グレードと異なるサンプルを提出するなどの不適切行為が、少なくとも1992年から約30年間続いていたことが判明しました。認証を受けていた412品種のうち122品種で不正が確認され、最終的に計62品種の認証取り消しに至っています。
再発防止の取り組み
2017年の問題を受け、東レは2018年2月に品質保証部門を統括する役員(品質保証担当)を設置し、品質保証本部を新設。2019年4月までに各工場の品質保証部門を本部の指揮下に統合しました。それでも2022年に別の不正が発覚した事実は、大企業における品質保証体制の定着がいかに難しいかを物語っています。品質・製造系の職種を志望する場合は、面接で「不正発覚後にどう組織や監査体制が変わったか」を具体的に確認することをおすすめします。
主な事業分野と製品
1. 繊維事業
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ナイロン・ポリエステル繊維、スポーツウェア・産業用資材
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合繊原料テレフタル酸(TPA)は、中国勢の増産による採算悪化を受け、2026年度中に東海工場(愛知県東海市、年産16.5万トン)での国内生産から撤退し外部調達へ切り替える方針が2025年2月に発表されました
2. 炭素繊維複合材料事業
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T800、T1100Gなど高強度炭素繊維で世界シェア約31%・首位
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航空機(ボーイング787)、自動車、風力発電向け。米国・韓国・フランスで増産投資が続く成長分野
3. 樹脂・化学品事業
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ナイロン樹脂、ABS樹脂「トヨラック」、ポリアセタール樹脂、フィルム、機能性化学品
4. 環境・エンジニアリング事業
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海水淡水化膜(RO膜)、排水処理設備、水質改善技術
5. ライフサイエンス事業
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医療機器(人工腎臓膜、血液浄化装置)、医薬品開発
業績と進行中の構造改革「ダーウィンプロジェクト」
2025年3月期は、炭素繊維事業の需要回復や機能性化学品・フィルムの好調により、事業利益が前期比41%増の1,428億円、当期利益は前期比約3.6倍の779億円と過去最高水準まで回復しました。2026年3月期は売上収益2兆8,300億円(前期比9.5%増)を見込む一方、純利益の伸びは市場予想を下回るペースとされています。
収益改善の裏では、2023年7月から不採算事業を対象とした構造改革「ダーウィンプロジェクト(Dプロ)」が進行中です。対象にはポリプロピレンスパンボンド・ポリエステル短繊維(繊維事業)、欧米子会社のポリエステルフィルム・ABS樹脂、米ゾルテックのラージトウ炭素繊維(複合材料事業)などが挙げられており、前述のテレフタル酸撤退もこの一環です。「ベストオーナーでないと判断すれば撤退・売却も検討する」と会社側は明言しており、事業ポートフォリオの入れ替えは今後も続く見通しです。転職の際は、配属予定の事業がこうした構造改革の対象になっていないか、面接で確認しておくと安心です。
東レの強み
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炭素繊維分野での世界的優位性:世界シェア約31%・首位、航空機・EV・風力発電向けの高付加価値需要を取り込む
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多様な事業ポートフォリオ:繊維・樹脂・環境・医療と幅広い事業で景気変動リスクを分散
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グローバル展開:海外売上比率が高く、29か国以上に研究開発・製造拠点を保有
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環境対応素材の開発:バイオマス由来素材、リサイクル繊維の研究開発
働きやすさに関するデータ
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離職率:2020~2023年度平均で約4.1%(入社3年後の離職率は14.2%との報告もあり、若手の定着が課題視されている)
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平均勤続年数:16.6年
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有給休暇取得率:人事部門は取得率90%を目標に掲げているが、社員クチコミでは「70%台」との声もある
残業時間については部署による差が大きく、OpenWork・OpenMoneyなどの口コミでは「月平均5時間程度」という声がある一方、「月60時間、繁忙期は150時間に達した」という報告も見られます。若手社員は基本給が相対的に低く残業代への依存度が高いことが離職要因の一つに挙げられており、会社側もこの課題への対策(研修・理念浸透プロジェクトなど)に取り組んでいます。配属部署によって働き方が大きく変わりうるため、面接で職場の実態を具体的に確認することをおすすめします。
国内の主要拠点
- 東京本社:東京都中央区日本橋室町2-1-1(経営管理・事業戦略の中心)
- 大阪本社:大阪市北区中之島3-3-3(関西における事業活動の拠点)
- 滋賀事業場(滋賀県大津市):東レ創業の地で、繊維・フィルム・樹脂・炭素繊維など多岐にわたる製品を製造する中核工場
- 愛媛工場(愛媛県):繊維、フィルム、不織布などの製造拠点
- 東海工場(愛知県東海市):炭素繊維複合材料や樹脂、医薬品の研究開発・製造拠点(テレフタル酸生産は2026年度中に終了予定)
- 三島工場(静岡県):ポリエステルフィルムや樹脂、繊維などを生産
- 岐阜工場(岐阜県):炭素繊維の製造拠点。航空機やスポーツ用品向けに供給
- 名古屋事業場(愛知県名古屋市港区):エンジニアリングプラスチックの生産拠点
海外の主要拠点
- Toray Carbon Fibers America, Inc.(米国):炭素繊維の生産拠点で、航空宇宙産業向けに製品を供給
- Zoltek Companies, Inc.(メキシコ・米国など):炭素繊維の生産子会社。自動車・風力発電向け製品を提供(ダーウィンプロジェクトの対象事業の一つ)
- Toray Textiles Central Europe s.r.o.(チェコ):自動車関連製品、機能性繊維、樹脂などを製造
- Toray Industries (China) Co., Ltd.(中国):中国における統括会社として繊維・フィルム・樹脂などの製造販売を管理
- P.T. Toray Industries Indonesia(インドネシア):繊維や紡績品の生産拠点
転職希望者が押さえるべきポイント
求められる人材像
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化学・材料・機械・電気分野の専門知識
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語学力(英語:TOEIC700点以上目安)、海外拠点対応力
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国際的なプロジェクト経験
採用職種例
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炭素繊維の研究開発・生産技術
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樹脂・フィルム製品の生産技術
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品質保証・コンプライアンス(過去の不正を踏まえ強化が続く分野)
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海外営業・技術営業
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医療機器の開発・営業
面接では、志望する事業がダーウィンプロジェクトの対象(構造改革中)かどうか、また品質保証体制がどのように機能しているかを具体的に質問することで、他の応募者と差のつく志望動機を組み立てられます。
まとめ
東レは炭素繊維で世界シェア首位を維持しつつ、2025年3月期には過去最高水準の利益を計上するなど業績面では堅調です。一方で、2017年・2022年と2度にわたる品質・認証不正の過去があり、品質保証体制の実効性は今も問われ続けています。また、テレフタル酸生産からの撤退に代表されるように、不採算事業の整理・構造改革(ダーウィンプロジェクト)も進行中です。転職を検討する際は、華やかな炭素繊維事業のイメージだけでなく、志望する事業の位置づけや品質保証・労務管理の実態まで確認したうえで、非公開求人も含めて情報収集することをおすすめします。
参考:東レ株式会社 2025年3月期決算の概要と2026年3月期見通しについて/日本経済新聞「東レの2026年3月期、純利益5.2%増 予想平均下回る」/繊研新聞「東レ、テレフタル酸の生産から撤退」/ITmedia「東レ、データ改ざん問題の報告書公表」/LegalSearch「東レの安全認証の不正取得に関する第三者委員会報告書の概要」/OpenWork 東レ社員クチコミ