化学業界の会社分析

積水化学の高機能プラスチック事業 〜多様な機能材で社会と産業を支える中核事業〜

1. 事業概要

積水化学工業の高機能プラスチック事業は、同社の3大事業セグメントのひとつで、
電子・自動車・医療・ライフサイエンス・インフラといった幅広い産業分野に機能性材料を供給しています。

この事業の特徴は、単なる樹脂成形品の供給ではなく、高分子化学・フィルム加工・複合化技術を組み合わせ、
顧客のニーズに応じた高付加価値素材を提供できる点です。


2. 主な製品群と用途

2.1 工業用フィルム・シート

  • ポリオレフィン系多層フィルム

    • 食品・医薬品包装材として使用

    • ガスバリア性や耐薬品性を付与

  • 光学フィルム

    • 液晶ディスプレイやタッチパネルの偏光板保護

    • 高透明性・低複屈折性が求められる

2.2 自動車関連材料

  • 軽量化樹脂部材

    • 燃費改善や電動化に貢献

  • 制振・遮音シート

    • 車内静音化と快適性向上

  • バッテリー用セパレーター

    • EV・ハイブリッド車向けリチウムイオン電池に使用

2.3 医療・ライフサイエンス関連

  • 医療用フィルム

    • 血液バッグ、輸液バッグ、医療用チューブなど

    • 柔軟性・耐薬品性・滅菌耐性が必須

  • 診断薬関連プラスチック部材

    • 検査キット用マイクロ流路チップなど

2.4 建築・インフラ資材

  • 高耐候性フィルム

    • 太陽電池モジュール封止材(POEなど)

    • 屋外長期使用に耐える防水シート

  • 防食ライニング材

    • 下水道・水処理施設の腐食防止


3. 技術的強み

  1. 高分子合成技術

    • ポリエチレン、ポリプロピレン、EVAなどの改質により、特定機能を付与

  2. 多層共押出・延伸加工技術

    • ナノ〜ミクロレベルで樹脂を積層、バリア性・光学特性を最適化

  3. 接着・ラミネート技術

    • 異種素材の密着性向上、剥離防止

  4. クリーン製造環境

    • 医療・光学用途向けの微細異物管理


4. 市場ポジション

  • 太陽電池封止材(POE):世界的トップシェア級

  • 液晶ディスプレイ用光学フィルム:主要メーカーのサプライヤー

  • 医療用バッグフィルム:日本国内で高シェア

積水化学は**「素材+加工+用途開発」**の垂直統合型モデルを持ち、顧客と共同で用途開発を進める点が強みです。


5. 持続可能性と環境対応

  • バイオマス樹脂の採用
    → サトウキビ由来ポリエチレンなどの開発

  • リサイクル適性の向上
    → モノマテリアル化技術による分別・再生容易化

  • 低VOC材料
    → 車内空気質改善や環境負荷低減


6. 今後の成長分野

  1. 再生可能エネルギー

    • ペロブスカイト太陽電池封止材

    • 風力発電ブレード用保護フィルム

  2. EV・電池関連

    • 高耐熱バッテリーセパレーター

    • 電動車用遮熱・絶縁フィルム

  3. 医療・ヘルスケア

    • 高機能透析膜や再生医療用基材

  4. 電子デバイス

    • 次世代ディスプレイ(OLED、MicroLED)対応光学フィルム


まとめ

積水化学の高機能プラスチック事業は、
「高分子化学+加工技術+用途開発」を三本柱として、
自動車・電子・医療・エネルギー・インフラといった幅広い分野にソリューションを提供しています。

特に太陽電池封止材や医療用フィルムは世界的競争力を持ち、
今後は再生可能エネルギーやEV、医療分野での需要拡大が期待されます。