化学業界の会社分析

積水化学の環境・ライフライン事業 〜水・インフラ・環境を守る基幹事業〜

1. 事業概要

積水化学工業の環境・ライフライン事業は、
上下水道・ガス・通信・農業用インフラなどの社会基盤を支える製品・システムを提供する事業です。

キーワードは 「安全」「持続可能」「省施工」
プラスチックの軽量性・耐食性を活かし、金属やコンクリートでは難しい長寿命化・コスト削減・環境負荷低減を実現しています。


2. 主な製品群と用途

2.1 水道・下水道関連

  • 硬質ポリ塩化ビニル(PVC)管

    • 上水道配管として使用

    • 耐食性・軽量性が高く、施工性に優れる

  • ポリエチレン(PE)管

    • 耐震性・耐薬品性に優れ、地震後の漏水リスクを低減

  • 下水道リニューアル材(SPR工法など)

    • 既設管を非開削で補強・更生する工法

    • 交通遮断や掘削を最小限に抑えられる

2.2 ガス配管

  • 中圧・高圧用PEガス管

    • 金属管より軽量で耐食性に優れ、長期信頼性が高い

  • 耐震継手

    • 地震時の地盤変動による損傷を防ぐ

2.3 通信・電力インフラ

  • 光ファイバー保護管

    • 通信ケーブル敷設用

    • 高密度化や長距離施工に対応

  • ケーブル保護材

    • 電力ケーブルの絶縁保護

2.4 農業・灌漑

  • 農業用パイプシステム

    • 灌漑や排水システムに利用

    • 節水・効率的な水利用を支援


3. 技術的強み

  1. 樹脂配管技術の長年の蓄積

    • PVC・PE・多層管など、多様な素材を用途別に最適化

    • 耐久年数50年以上の長寿命設計

  2. 耐震設計

    • 地震国・日本で培った耐震継手・可とう管設計

  3. 非開削工法

    • 地上掘削をほぼ行わず、既設管の更生が可能

    • 工期短縮・交通影響の低減・CO₂排出削減

  4. クリーン製造

    • 水道用材料は厳格な衛生基準を満たす生産体制


4. 社会的役割と価値

  • ライフラインの安定供給

    • 水・ガス・通信といった生活必需インフラを守る

  • 災害レジリエンス向上

    • 耐震性・耐食性の高い素材で復旧時間を短縮

  • 環境負荷低減

    • 軽量化による輸送エネルギー削減

    • 非開削工法によるCO₂排出抑制

  • 省施工・省人化

    • 人手不足時代に対応する施工効率の高い製品群


5. 主な市場とシェア

  • 日本国内のPVC管市場で高いシェア

  • PEガス管でも国内主要プレイヤー

  • 非開削工法(SPR工法)は国内外で累計数千kmの施工実績


6. 環境対応・持続可能性

  • 再生樹脂の活用:下水道管材などにリサイクルPVCを使用

  • 長寿命化による廃棄物削減:交換周期延長でライフサイクル負荷低減

  • CO₂排出削減:軽量樹脂材料と省施工工法の組み合わせ


7. 今後の展望

国内市場

  • 老朽化インフラ更新需要の高まり

  • 耐震化・災害対策強化による需要拡大

海外市場

  • アジア諸国の都市インフラ整備で樹脂管需要増

  • 非開削工法の海外展開(北米・東南アジアなど)

新技術分野

  • ICT活用のスマート配管監視システム

  • カーボンニュートラル対応素材(バイオマスPVC、低炭素PE)


まとめ

積水化学の環境・ライフライン事業は、
「安全・長寿命・低環境負荷」というキーワードで社会インフラを支える中核事業です。
樹脂管・耐震継手・非開削工法などの製品と技術を組み合わせ、
災害に強く、環境にも配慮したライフライン整備を国内外で展開しています。

今後は、老朽化インフラ更新需要と海外都市化の進展により、
さらなる成長が期待される分野です。